絵本作家・中村まふねさん/ミュージカル「かけめぐる。」ビジュアル制作秘話(前編)

『とおのちいさなとびらのむこう』『種をあつめる少年』など、とても印象的な絵本を制作している中村まふねさん。2024年8月に公演したTokyo EHON座 第2回公演 ミュージカル『かけめぐる。』のパンフレット等のメイ ンビジュアルをご担当いただきました。今回は、そんな中村まふねさんへ『かけめぐる。』 のイメージ制作のお話や、舞台の感想をお聞きしました。

「かけめぐる。」あらすじ
感情がある。僕にも、あなたにもー 感情を抑えることが正しいオトナシ王国。大人しくて「とても良い子」のカケルと、感情を抑 えきれず先生にいつも怒られているメグル。ある日、二人は社会科見学で行った「感情博物 館」で、イザベルという「怒り」の感情に支配された老婦人と出会う。それから何故かカケル には、その恐ろしいイザベルがくっついてしまう。イザベルの「怒り」の理由は何? その謎 を紐解いていく中で、カケルとメグルには、少しずつ友情が芽生えていく。

―この度は「かけめぐる。」のメインビジュアルをご担当いただき、ありがとうございました。Tokyo EHON 座のビジュアル制作をしてみて、いかがでしたでしょうか。
また、舞台を観た感想を教えてください。

 Tokyo EHON 座の代表をされている時枝さんと初めてお会いした際に、アンデルセンや、ミヒャエル・エンデなど、劇作家をしていた作家さんについてお話をした記憶があります。大好きな童話や児童文学の作家が劇作もしていたという背景もあって、演劇という芸術のかたちには元々興味があり、ご依頼を嬉しく思いました。今回お稽古から本公演まで、本番は2チームの公演を観せていただき、ダブルキャストの役柄はそれぞれに魅力的で、演技や演劇って面白いなと感じました。

―因みに、好きな登場人物やキャラクターはいましたか?

 (感情博物館の展示説明する役柄の)KJ BOYZのラップシーンが好きでした、ノリノリで、とても面白かったので。笑
でも座員の皆さんそれぞれの姿に感動しました。

―KJ BOYZ は意外です!
では、中村さんが絵本やイラストに携わることになったきっかけに ついて、お聞きしてもよろしいでしょうか。

 子どものころから本を読むことが好きだったので、地元の図書館に通ってよく本を読んでいました。ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」の装丁や、武井武雄の本づくりに憧れて、高校卒業後に上京し、デザインと美術が学べる学校に進学しました。小さな美術学校だったのですが、デザインはもちろん、絵本制作やイラスト、銅版画、シルクスクリーン版画や木工など、希望があれば学科を問わず学ぶことができ、手仕事だらけの世界に囲まれて、しあわせな学生生活でした。
 現在ものんびりとではありますが、学生時代に夢中になった銅版画の技法を使い、絵本や物語にまつわるお仕事させていただいていて、子どものころの夢を少しずつ叶えられてあげられているのかな、と思っています。

―なるほど。イラストなど、普段のお仕事をされる時と違うなと感じたことはありますか?

 舞台のお仕事自体が初めてだったのですが、ご依頼をいただいた段階ではまだ台本が未完成だったので、お稽古におじゃまして、座員さんひとりひとりの雰囲気を見せていただき、時枝さんの頭の中にあるお話やキャラクターのイメージから遠く離れていかないよう、手探りで制作を進めていきました。本公演を観た時、舞台の完成度や、会場の熱量に感動したのと同時に、目の前に立つ登場人物の姿と、自分が描かせていただいたイラストの答え合わせをしているような感覚になり、それがとても楽しかったです。制作初期に、虹色の本屋さんの看板をイメージした絵を時枝さんにお見せしたところ、そのデザインを舞台美術に取り入れてくださり、本公演ではそのセットにも感動していました。

―舞台をつくることと、絵を描くこと、それぞれフィールドは違いますが、ものづくりをする立場としての共通点は何か感じましたか?

 ひとつの公演をみんなで作っていくという演劇特有の臨場感はとても面白いなと感じました。絵を描くということは個人作業ですが、本を作るときは関わっている人がそれぞれの役割や愛情をもってひとつのものを作っているので、ものづくりとしての感覚は近しいものもあると思います。

―なるほど。影響を受けた作家さんや、お好きな作家さんはいらっしゃいますか?

 この本を開くとこの世界があって、あの本を開くとまた違う世界があるというような、本棚にたくさんの世界が詰まっているという状態が自分にはしあわせなので、たくさん好きな作家さんがいますし、好きな本があります。

―いろんな世界線。素敵ですね。来週のブログで、より詳しくおすすめの本のご紹介いただ きたいと思います!中村さんが今後、作ってみたい作品などはありますか?

 まだまだ夢のままのお仕事がたくさんあるので、少しづつ温めて、いつか形にできたらいいなと思っています。

―これから、Tokyo EHON 座の第3期が始まるのですが、座員の方々にメッセージや応援 があれば是非お願い致します!

 第2回公演を拝見し、座員のみなさんひとりひとりの個性と魅力のつまった舞台に圧倒されました。講師陣の方々の熱い気持ちやお人柄を感じられるエネルギッシュなお稽古の様子にも、見ているだけで元気をたくさんもらえ、胸があつくなる、うれしい体験でした。
第3回公演も楽しみにしております。

―中村まふねさん、ありがとうございました!
来週のブログでは、中村さんにオススメの図書をより詳しくお聞きし、子供から大人まで楽しめる、物語の世界をご紹介いただきます。どうぞお楽しみに。

(取材・文・舞台写真/Tokyo EHON座 事務局・取材写真/時枝 千晶 @chiakihlc)

この内容は後編へ続きます。
→絵本作家・中村まふねさん/ミュージカル「かけめぐる。」ビジュアル制作秘話(後編)

中村まふねさんのプロフィールや作品集をご覧いただけます。
→中村まふね プロフィール・作品集

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